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悩みのスタジオ
「2週間のご無沙汰でした。『深層レポート』の時間です。今回はスタジオからお送りします」
「前回、悩みの現場から、人間関係で悩むAさんにスタジオまでお越し頂きました。それからというもの、このスタジオで異変が続いています。
Aさんの悩みが伝染したのかどうか、スタジオはまさに『悩みの現場』と化してしまいました。悩みを訴えるものが続出しています。
かくいう司会の私も、プロデューサーとの確執に悩む日々です。このままでは、降板の時期も近いかもしれません。誰か私に次の仕事を紹介(ピーッ)……」
「司会の者が妙なことを口走ってしまい、大変失礼致しました。お詫び申し上げます。私がMCを担当させて頂きます。
なぜ、スタジオにまで悩みが蔓延してしまったのか、未だ原因は不明です。前回もお伝えしましたが、悩みの現場が人気スポットになっていたことを考えますと、人間というのは悩むことが好きなのかもしれません。
かくいう私も、現在、子供の親権を巡って離婚調停中(ピーッ)……」
「……重ね重ね、誠に申し訳ありません。深くお詫び申し上げます。私が引き継がせて頂きます。
悩みの恐るべきパワーの一端が垣間見えたのではないでしょうか。この感染力の源はどこにあるのでしょう? 悩みの現場から離れることができたとしても、この感染力の強さから逃れるのは容易なことではなさそうです。
かくいう私も、最近体調が……おおっと、危ない、危ない。危うく私も感染しそうになってしまいました。不注意をお許しください。」
「いま、悩みに感染しそうになった時、私がどういう行動をとったかお気づきでしょうか?
悩みの渦が目の前に現れたとき、私はその渦から逃げようとしたでしょうか? それとも、何もせずただ立ちすくんでいたでしょうか? もしくは、進んで渦の中に飛び込もうとしたでしょうか?」
「そのどれでもありません。私がとった行動は、(ガタッ、ガタガタガタッ…)
あっ、地震のようです。揺れています。かなりの揺れです。た、立っているのが精一杯です。
いや、これは地震ではありません。スタジオの外は揺れていません。揺れているのはスタジオだけです」
「あああッ、スタジオが空中に浮かんでいます! なんということでしょう。空中に浮かんで移動を始めました。いったいどこに行くのでしょう? 
引き続き中継をしたいところですが、激しい揺れにそれは(ガタガタガタッ)、む、むずかしそうです。
いったん放送を中断させて頂きます……」
以下、次回です。

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