可視域2017.2.9更新
前回のコラムにも登場した、
自己評価が高く、他者評価が低いAさん。
Aさんはなぜ周囲の評価が低いのか、自分ではいい仕事をして来たと思っているだけに、納得が行きません。
歯に衣着せぬ言い方をして、上司に嫌われた? 人の意見にあまり耳を貸さないから? 頑固だから?
Aさんなりに分析はするのですが、ハッキリした理由はわかりません。理由がわからないので、Aさんは正当な評価をしない会社が悪いと思っています。
でも、Aさん以外の人には、その理由は明白です。Aさんが、周囲から評価されるような仕事をしてこなかったからです。
でも、不思議なことに、それがAさんにはわからないのです。
ここに、Cさんという人がいます。Aさんの後輩です。
Cさんは、Aさんからお説教されることがあります。 例えば、 「あなたは自分では、できていると思っているかもしれないけど、私から見ると、あなたの企画はどこか人間味が感じられないの。統計上のデータを集めて企画を練るだけじゃなく、現場にも足を運んで、自分の肌で感じたことを活かさなきゃ。ネットの時代だからこそ、現場が大事なの。自分のやり方に囚われず、他のやり方にも目を向けて」
もっともらしいアドバイスです。
でも、周囲の人から見ると、全く同じことがAさんにも言えるのです。
Aさんと同期のBさんはこう言います。
「Aは、現場にはよく足を運んでいるようです。取材もしているようですが、自分の肌感覚だけで仕事をしようとするんですね。肌感覚を裏付けるデータを用意しないんです。だから、説得力が希薄だと何度か指摘したんですが、聞く耳を持ってくれませんでした」
人へのアドバイスが、そのまま自分に当てはまることはよくあることです。自分に見える周囲の人の欠点が、自分の欠点であったりもします。
なぜでしょうか? 
人は見えるものしか見えないからです。自分に見えるものは、自分と似たもの、あるいは自分にもあるものです。
これは、人間が可視光で見えるものしか見えないことと似ています。
ところが、電磁波には可視光以外に紫外線や赤外線もあります。これは人間には見ることができませんが、鳥や昆虫は紫外線が見えると言われています。
人間を自分、鳥を他者ととらえ直してみるとどうでしょう?
他者には見えているのに、自分には見えていないものがあることになります。
人の中にも、鳥のように可視域の広い人もいます。その一方で、Aさんのように自分のことしか見えない人もいます。
では、どうしたらAさんは、周囲のことが見えるようになるのでしょうか? 
まずは、自分には見えていないものがあると認めることです。可視域を広げるためには、それがスタートです。
そして、人は自分にあるものしか見えないのですから、自分にあるものを増やすことです。自分を豊かにするしかないのです。
では、どうしたら自分を豊かにすることができるのでしょう?
他人のせいにしないことです。人のせいにすると、自分の畑を耕すせっかくの機会を逃すことになってしまいます。自分の人生の主人公は自分しかいないはずです。みすみす他人に主人公の座を譲ることもないでしょう。
 

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