「悩みの上書き」
商店街で、買い換えたばかりのスマホがフリーズしてしまい、
悩んでいる女性(34歳・営業職)がいます。
「この忙しい時に、なんて間が悪いんだろう! 本当にスマホって役に立たない!!」
顧客へ連絡をしなければいけない時間が迫っている彼女は、
使えなくなったスマホに悪態をつきつつ、公衆電話を探して走り出しました。
走り回っている途中、偶然にも、まるで漫画かドラマのように、
付き合い出したばかりの年下の彼氏が、若い女性と腕を組んで歩いているシーンに
出くわします。
「あの娘は誰? あの親しげな様子は何? 今は仕事中じゃないの? 
声を掛けるべき?」
彼女が逡巡している間に、彼は彼女に気づいてしまいます。
目が合ったとき、彼がとった行動は…無視でした。
彼女からスッと目線を外し、何食わぬ顔で歩き去ったのです。
茫然自失する彼女……。
いつの間にか、スマホが使えなくなっていることは忘れています。
我に返り、慌てて公衆電話を探し出し、顧客に電話ができたのは、
約束の時間を10分過ぎた頃でした。
相手の企画部長はすでに会議に入っており、しばらく連絡は取れないとのこと。
電話で話をする約束を取り付けるだけでも1週間かかったのに、なんたる失態!! 
上司の苦虫を噛み潰したような顔が目に浮かびます。
この時、彼女は彼氏のことは忘れています。
わずか15分くらいの間に、3つもの悩みを抱え込んでしまった彼女。
そしてその悩みは、時間の経過とともに「上書き」されていきました。
スマホの故障も、彼氏との関係も、顧客へのお詫びと再度のアポイントも、
すべてはこれから解決しなければならない問題です。
新しい問題が発生したからといって、それ以前の問題が解決されたわけではありません。
しかし、気づいて欲しいことがあります。
それは、彼女の悩みは同時に共存することはなく、
すべて「上書き」されていったということです。
ひとつの悩みに頭(心)を占められていた時、他の悩みは影を潜めていました。
これはどういうことでしょうか?
少し違う角度から眺めてみましょう。
商店街でスマホがフリーズしてしまい、顧客へ連絡をしなければいけない彼女が、
公衆電話を探して走り出すまでは同じです。
その後、付き合い出したばかりの年下の彼氏が、ひとりでいるところに
バッタリ出くわしたとしたらどうでしょう。
彼女は一瞬スマホのことも顧客のことも忘れて、心が幸せに満たされるのでは
ないでしょうか? 
つまり、悩みであれ喜びであれ、
本人にとってそれがある程度以上の重要性を持つものであれば、
心を占めてしまうのは、ひとつだけだということです。
複数の重要事項が、同時に心を占領することはないのです。
これは何を意味しているのでしょうか?
それは、「心の上書き機能」を使い、常に喜びで「上書き」をしていれば、
悩みが顔を出すスキはなくなるということです。
もちろん問題は残されたままです。
でも、問題の解決に当たることは、悩みではなかったですよね。
とは言え、どうしたら常に、 喜びで「上書き」をし続けることができるのでしょうか?
それは次回に。
 

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