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悩みからの解放
Aさんは長い間、職場の人間関係に悩まされてきました。
左隣にデスクがある攻撃的なBさんのお陰で、首が左に曲がらなくなるくらい、悩みは深いものでした。
Bさんの機嫌を損ねないように、ただただ息を潜めて日々をやり過ごしてきたAさん。
ところが、そのBさんが、不定期の人事異動で別の部署に移ることになりました。
突然の悩みからの解放。
予想していなかっただけに、Aさんはホッとするというより、脱力感に襲われました。へなへなとその場に座り込んでしまうような、そんな感じです。
垂れ込めていた霧が晴れて、明るい太陽がサンサンと照りつけるような気分にならなかったのが、Aさんには不思議でした。
夜の眠りも浅く、重い足を引きずるように出社し、緊張で胃が締め付けられるような時間を過ごしたあの日々は、いったい何だったのか…!?
Aさんには、Bさんと離れられる喜びではなく、後悔の念が湧き起こってきました。Bさんとの2年間を、ただ下を向いてやり過ごしてしまった自分に対する後悔の念…。
大事な時間を無駄にしてしまった自分に対する情けなさ。
Bさんへの恐怖心から、萎縮するしかなかった自分への歯がゆさ。
下を向いて過ごしていた時も、今と変らず自分を照らしてくれていた太陽に対する申し訳なさ。
自分は何か、もっとやるべきことがあったのではないか?
Bさんは去ったけれど、Bさんと同じようなCさんが、隣の席にやって来ないとも限らない。そのとき、また自分は息を潜めて、日々をただやり過ごすのか?
それで、生きていると言えるのか?
Aさんには様々な思いが去来します。
Aさんにとって、Bさんという悩みからの解放は、次のステップへの始まりとなりました。
悩みの原因がなくなった時が、悩みから解放される時ではなく、悩みの原因があっても、それに悩まされないことが、本当の悩みからの解放になる…。
そのことに、Aさんは気づきつつあります。
 

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